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久しぶりに帰省し、幼なじみと地元の総持寺で初詣する安田蒼唯さん(左端)=2025年1月1日午後9時52分、有元愛美子撮影

 「もうあれから1年たつんだ」。能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市門前町出身の安田蒼唯(あおい)さん(19)は、年末年始、実家に帰省した。地震当時は高校3年生で、2週間後に大学入学共通テストを控えていた。「あの時は勉強どころじゃなかった。全国の子たちと戦わないといけないなんて、平等じゃなかったよね」「俺も志望校を変えるしかなかった」。県外の大学に通う幼なじみ同士で、普段話せない思いを分かち合っていた。

大きな横揺れ 浮かんだのは津波の映像

 安田さんは昨年の元日、家族と自宅にいた。午後4時10分、長く続く大きな横揺れに耐えた後、外に出ると景色は変わり果てていた。電柱は傾き、地面には亀裂。大津波警報が鳴る中、祖母の手を引き、高台まで必死で走った。東日本大震災の津波の映像が頭に浮かんだ。

 高台の建物に避難すると、次第に辺りは真っ暗になり、冷たい風が吹き付けた。地域の人たちが布団や食べ物を持ち寄り、「大丈夫、大丈夫」と互いに励まし合った。繰り返し余震が起こり、警戒のアラームが鳴るたび「このまま死んでしまうのかも」と大きな不安に襲われた。「もう今年は受験しない」。思わず母にこぼした。

電気も水もない 窓から漏れる光で勉強

 翌日、物が散乱した自宅から…

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